『PORTRAIT』インタビューVol.5 柳原由佳

「今西バンドのメンバーは少年のような(笑)」

柳原由佳

LINXやKHAMSIN’18といったオリジナル曲を中心に演奏するインスト・バンドやヴォーカルとの二人組ユニットなど様々なバンドで活躍するピアニスト、柳原由佳。ソロ・ピアノでもアルバムを2枚もリリースされており、経験豊富なピアニストの参加はきっと今西セクステットにとっても大きなプラスだったに違いない。お話をうかがったのが、今西さんが双頭バンドのリーダーを務める、ボーンオロジーのライヴ終了後ということで、途中から今西さんにもインタビューに参加してもらった。

●バンドの空気感
――今は大阪と東京の両方で活動されているとうかがいましたが。

そうですね。明後日からまた東京で、今はひと月のうち半分づつ大阪と東京に滞在しています。だから、大変ですね。東京のライヴはちょっとずつ増えてきている段階です。どんな編成でもオリジナル曲を演奏する機会が多いかな。そういう演奏が好きなんで、大阪でも増えてきていて嬉しいです。セクステットでもオリジナル多いし。

――新加入ということですが、今西セクステットのバンドの雰囲気などの印象はどうでしょうか?

みなさんキャラがたっているじゃないですか?全然気にしていないんですけど、女性が一人だけなんで、なかなか男同士の会話にはねえ・・・。入りたいんですけど(笑)

――ああ、でも今西セクステットって、ちょっと男子校みたいなイメージがありますかね?

そうですね、男子校みたいな感じですよね。少年のようなバンドというか。光岡さんとかアニキみたいな感じでしょうか。(同じく最年長の)弦牧さんはいじられキャラなのかな?バンドの雰囲気がやんちゃだな、と思うこともありますね。

――もう一人のピアニストが永田有吾さんですが、アルバム収録曲をどちらが演奏するという振り分けはお二人でされたとうかがいましたが。

私は4曲演奏したのですが、アップテンポの曲に関してはブルースと循環(スタンダードでよくみられるコード進行の一つ)の2曲あったので、1曲ずつやろうという話になりました。私が循環を演奏して、永田くんがブルースを演奏しました。最近、ブルースは演奏していなかったので自然と循環を選びました。

摂津本山のボーンフリーにて。2トロンボーンバンド、ボーンオロジーのピアニストも務める

●作曲科出身の柳原さんに今西さんのオリジナル曲について訊く
――作曲科出身の柳原さんにうかがいたいのですが、今西さんのオリジナル曲についてはどういう印象でしょうか。

今西さんはスタンダードもすごく詳しいですよね。コード・チェンジ滑らかなような気がします。なので、聴いていて耳心地がいい。Ⅱ-Ⅴとかジャズでよく使われているコード進行を無理に使う、とかされていないですよね。

私は色彩とか風などからイメージを受けて表現する曲が多いんですけど、たとえば「Musicuriosity」とか、色鮮やか感じですよね。その理由はコード進行を先に考えて作られていないと思う。AABAだとか、ABACだとかいうフォームにもとらわれていないんですよね。着地点もキャッチ―だし、一回聴くと耳に残るという印象ですかね。そういうのは性格からの影響が多分にあると思います。日本人だから日本人が共感できるコード進行とかを選ばれているというのがあるのかもしれないですね。

――演奏していて難しい曲とかありますか?

「Fellowship」ですね。イントロが難しかったです。録音でも何度も練習し直したりしました。そのときにみんなが協力的で、「がんばれがんばれ」とか応援してくれて有難かったですね。
何曲か根を詰めて、今日中にこれは絶対、録らなくちゃいけない曲もあったんですが、みなさんいい雰囲気をつくって下さって、上手い人っていい人が多いんだな、って思いました(笑)楽しかったです。

――弦牧さんと光岡さんのリズム隊はどうでしたか。

やんちゃな少年が遊んでいる(笑)面白くて生き生きしてる。2人のアニキ、いつも頼りにしてます。

●今西さんにもインタビューに参加してもらって
――いま、今西さんの曲についてうかがっているんですけど。

柳原: 「Smile Maker」とかキャッチ―ですよね。色彩豊かな曲が多いですよね。

今西: 作曲するときにカラフルな曲にしよう、というのは心掛けています。

談笑する今西さんと柳原さん

――當村さんのバッキングについてはどうですか?

今西: まあ、キーマンですよね。ぼくとか横尾くんなんかはコンピングしやすいけど、當村くんはただならぬ緊張感があるから、難しいかも。

柳原: 當村さんの場合、まず光岡さんがどう動くかをみます。でも、光岡さんけっこう我が道を行って動じないですよね。

今西: うん、そうですよね。

――光岡さんは、インタビューでは弦牧さんの反応をみてから動く、って言っていました。弦牧さんが見失わないようにキープすることもあるって。

今西: それはあると思う。

柳原: 弦牧さんは當村さんのこと大好きなんやなあ、と思う。実際、梅田で演奏したとき、デュオになって10分くらいずっと演奏していたことはある。

今西: 10分は言いすぎやけど(笑)、体感10分くらいだったかも。

柳原: このバンドのフロント3人は全然、キャラクターが違ってて面白いですよね。

●好きなピアニストについて
今西: 好きなピアニストとか誰なんですか?

柳原: キース・ジャレットとかアーロン・パークスかな。あっ、ハービー・ハンコックも。

今西: なるほど、やっぱりそういう感じか。全然違うかもしれないけど、ケニー・バロンとかフレッド・ハーシュの新譜聴いてて柳原さんっぽいとこあるなあ、って勝手に思ったりしてました。

柳原: ああ、ハーシュは好きです。めっちゃはまったときもあります。最近はすごい新譜だしてますよね。神々しい感じも好きです。あと、ブラッド・メルドーも好き。

今西: えっ、メルドー好きなんや?なんか、あの人は冷たい感じがするでしょ?暖かくないイメージかな。バラッドとか弾いてもなんか冷たい感じがするわ。音色がキーンってしている。

柳原: でもそれは研ぎ澄まされた感覚からきているものだったりしません?

今西: ああ、そうなんかも。でも由佳ちゃんは何弾いても暖かいもん!

柳原: ゆるゆるですか(笑)

今西: いやいや、心をこめて弾いてくれている感じがする!

――確かに、ジ・アート・オブ・トリオの頃は厳しい音楽をやっていたと思うんですけど。

柳原: あのトリオは疲れていると私、聴けないときがありますね。

今西: 分かる。しんどい時あるよねー。

柳原: お子さん生まれてから変わった気がします。『Highway Rider』(Nonesuch)とか。

今西: へぇ。あれお子さん生まれてからなんやー。

談笑する・・・パート2

●最後にドラマー、柳原由佳について
――学生時代にドラムスもされていたと聞いたのですが。

柳原: バークリー音大もドラムスで行こうかと思ったくらい好きです。

今西: 今はやっていないの?

柳原: 今はやっていないです。またやりたいですね。

――いつか、柳原さんのドラムスが聴けるのを楽しみにしています!

<後日談>
インタビュー終了後、今西さんは「全然、アシストできてないっすわー」などと自省しておられましたが、メンバー同士の会話は通常のインタビューと全く内容もノリも変わるので面白かったです。たとえば、好きなミュージシャンを尋ねるということの嫌味のなさや、その後の会話がスルスルとでてくるのは同じレベルの仲の良いミュージシャンだから聞くことができたんじゃないかな?と思いました。

しらきたかね

2018年11月1日

すっかり寒くなりましたね。
寒さにめっきり弱い僕は今日からダウンを着込んでもう冬の心づもりです。
ダウンあったかい。最高。
今回のハロウィンジャンボで一等の三億円を当てて、今頃南の島で豪遊してるはずだったんですが、、、今日も仕事です。
コツコツ頑張ります。
また年末ジャンボに期待したいです。

さて、このブログの更新と言えばここ最近は『PORTRAIT』発売連動企画、作家しらきたかねさんによるセクステットメンバーへのインタビューばかりでこうして日記を書くのは久しぶりです。

この秋は楽しみだったCDや本が一気に発売されるのでもうウキウキです。

Christian Mcbrideの新譜『Christian Mcbride’s New Jawn』ではアメリカ留学中に年下なのに凄いトランペッターがいるなーって毎度セッションやライブで感心ばかりしていたJosh Evansが参加していて、前から楽しみでした。
コードレスカルテットなのでどうしても取っ付きづらいし小難しく聞こえるのは仕方ないとは思いますが、メンバー全員が楽器を自分の体のようにフルに扱えててとても面白いです。

発売は少し前だったみたいですが、Andre HaywardとChris Jonesの双頭名義の『Way Back Home』がめっちゃストレート・アヘッドな「どジャズ」で好きですね。
5曲目に収録されているジャッキー・マクリーンの書いたFブルース、Bird Livesは留学中よく演奏していた曲で懐かしくなりました。
どの曲もAndre Haywardのソロ最高です。
もっとCD出して欲しい。本当に。

David Hazeltineの『The Time Is Now』も良い感じです。
やっぱりこの人のリハーモナイズが僕的には一番好きです。自然だしカラフルだしお洒落。
またゆっくり研究させてもらいます。

Walter Smith IIIとMatthew Stevens参加の『In Common』が今一番のお気に入りです。
CD一枚で37分という短い作品なんですが、繰り返し聴きたくなります。
ヴィヴラフォンのJoel Rossが良い仕事してますねー。

他にもAmbrose AkinmusireとかMiguel ZenónとかWolfgang Muthspielとかの新譜も買いましたが、なんか紹介がめんどくさくなってきたので省きます。

さて、本の方は何が発売されるかというと、いよいよ明日、僕の一番好きな作家、伊坂幸太郎さんが一年ぶりに新刊を出されるんです!
待ちきれん!!
今から仕事前に本屋を覗いてみようと思います。
一日早く置いてないですかね。

そして、11/16には森見登美彦さんの新刊も出るということでいやー楽しみ!

『PORTRAIT』インタビュー記事はこれから毎週月曜日あたりに更新予定です。
また気が向いたら日記も書きます。
では寒いので皆さん風邪などひかないようどうぞお気をつけて下さい。

P.S. 今本屋覗いたんですがやっぱり伊坂幸太郎さんの新刊まだでした。明日が楽しみ!

2018年11月のライブスケジュール

この先決まってるライブスケジュールはメニューにあるLive Scheduleで全部公開していますのでそちらもどうぞご確認下さい。

11/4(日)Dear Lord(放出)
Dear Lord7周年記念企画
今西佑介セクステット
開場 18:20
開演 19:00
残席3席、要予約(℡090-8141-7309まで)
¥2500(無料おつまみ有り)

11/14(水)
今西佑介セクステット 5th CD “PORTRAIT” 全国発売
全国の大型CDショップ、Amazonなどの通販サイトなどで販売
試聴はMusicより
¥2000

11/17(土)ペインクリニック
ハードバップ研究会

11/28(水)シアタージャジー(元町)
野江直樹(ギター)さんとデュオ
1st 20:00-, 2nd 21:00-
¥2000

11/30(金)Cafe萬屋宗兵衛(元町)
今西佑介セクステット
1st 19:30-, 2nd 21:00-
¥2500(学生¥1500)

『PORTRAIT』インタビュー Vol.4 弦牧潔

「莫大な遺産と思う反面、呪縛だとも感じる」


弦牧潔

7月某日、台風の影響で私の最寄り駅に使っているJR線は運休。梅田での演奏前にお話しをうかがうという約束をしていたが、こりゃ、演奏自体も中止されるのかなと思いきや、決行されるとのこと。ならばと、当日は連絡を密にし、一駅向こうの地下鉄線で駆け付けるも、いざインタビューを開始してみたら、「うーん、(音楽について)言語化したくないんですよね。答えを出したくないというか、じわじわ仲良くなりたいんですよ」とのこと。がびーん。ならば!ということで、弦牧さんと縁が深い2つのお店についてお話をうかがってみました。他のメンバーと少し毛色が違うインタビューとなりましたが、弦牧さんの思いと永久保存版ともいうべき。現在につながる関西のジャズ史の一端がみえる話が聞けました。

新作について

――新作を聴いて、ドラムスがよりストレートな演奏だなと感じました。前作までと違って、弦牧さんのトレードマークといってもいいパーカッシヴな演奏や独特なリズム・パターンのドラムスが聴かれませんでしたが?

ああ、あれはそのレコーディングしていたときの気持ちがそうだった、ということなんです。レコーディングが一週間後にずれていたら、また違う演奏になっていたと思います。

――弦牧さんといえば、老舗ジャズ・クラブ、<SUB>のイメージが強いですが、そういったパーカッシヴな演奏というのもそちらで培われたものでしょうか?

いや、あそこではふつうに叩いていたんですが、<SUB>の外で、いろんな人とも共演するようになってから、ああいう演奏もとりいれていった感じです。


滝見小路で行われたライブにて

弦牧さんとSUB

――そもそも弦牧さんと<SUB>との出会いはどういうものだったんでしょうか? 

初めて行ったのは、横山静子さん(pf)、田井中福司さん(ds)、西山満さん(b、<SUB>の前オーナー)のトリオを聞きに行った時です。大学の先輩に勧められて。2000年の夏だったと思います。 その後セッションに頻繁に通うようになります。「あんたえぇドラムやな。名前何ていうんや?」ってのが10回くらいありました。 バイトの人たちが辞めるタイミングが重なった時に谷山和恵さんが西山さんに新たなバイトにどうですか?と紹介してくれて、1度蹴られるんですが1年後くらいから働き始めました。 「西山さんと関大」って言うと、竹田一彦さん(gt)も関大で…とか言い出すと無駄に長くなってしまうのでやめときます(笑)ぼくと比較的年齢が近くて活動してるのは横尾昌二郎(tp)、武藤浩司(as)、山本学(b)ですかね。誰か忘れてたらごめんなさい。 

――やっぱり、弦牧さんにとって西山さんの存在は大きいですよね。

ぼくらと西山さんの関係性は一言で言うとG.S.B.(弦牧さんを中心に現在も活動しているバンド)ですよね。Grand Son Bandの略で、僕らは西山さんの孫なんです。もちろん血縁では無くて音楽的にです。 西山さんは固定のメンバーを持つバンドも、お店に集まる若人みんなの総称も、G.S.B.呼んでました。 孫バンドの前身のバンドが2つくらいあって、その2つ目のバンドにいた西野類が就職で抜ける時に横尾くんを連れていきました。 西野くんも関大Jazz研で、今は会社員をやってます。が、ものすごいアルトを吹きます。前身バンドはこんな感じかな。

 ※G.S.B.の前身となったバンド 

1.宮脇知子vo、西山満vc、広瀬未来tp、吉本章紘ts、西野類as、須藤雅彦gt、大塚亮介pf、宮上啓仁b、弦牧潔ds @<バー・トニーワン>(園田)

2.宮脇、西山、須藤、西野、弦牧 @<ササラ>(谷4)

――そう言えば、以前にも弦牧さんにうかがったことがある方ですね。そして、今や関西の一線で活動されているミュージシャンのお名前が次々と出てきますが!

孫バンドが始まった時は横尾くんと奥村美里(pf)、西山さん、ぼくの4人だったと思うのですが、武藤くんが飛び入りにきた時からメンバーになりました。その後、岩本敦(tp)、早川惟雅(as)も同様に飛び入りからメンバーになったと記憶してます。 山本は、その頃誰かがバイトを辞めるので代わりに入り始めたのがきっかけだったと思います。 もひとつ余談ですけど、あのお店でぼくらにとって欠かせないのが第2火曜の宮さんの日です。 宮哲之さん(ts)と井上幸祐さん(b)のデュオのライヴで、宮さんの好意でぼくとか須藤雅彦(gt)、宮上啓仁(b)が飛び入りをさせて貰ってたのが、いつの間にかこの日は終わってから宮さんとセッション出来るぞ!って上記のG.S.B.な子らや、同年代の子たちが集まって朝までワイワイやってました。あの時間が愛おしいですね。


Cafe萬屋宗兵衛で行われた今西セクステットのライブにて

――そのSUBは西山満さんから、同じくミュージシャンでもある長谷川朗さん(ts)に店主が代わられました。今でも弦牧さんにとってあちらは特別な店になるのでしょうか?

考えたことも無かったんですが、改めて考えてみると、あの店が特別だったのは一緒にいた人たちと共有した時間だったんだなと思います。バイトしてた頃に、ここは子宮だから早く出て行かなければいけない、って考えたりもしていたんですけど、ぼくが依存していた部分と西山さんが(ぼくがいると)便利だったりとかで離れられなかったですね。10年目に辞めるぞ!って思ってたら西山さん、死んでしまったのでしばらくへその緒を引きずってい ました。 西山さんからもらったものは莫大な遺産だとも思う反面、呪縛だと感じるときもあります。
話が逸れまくりましたね。 朗さんの代になってSUBはぼくの特別な場所ではなくなりましたが、沢山の新しい若い人に取っての特別な場所になっていると思います。気軽な値段で濃ゆいジャズが楽しめるのでぜひ一度行ってみて下さい。
※SUBは10月1日より1週間強の休業後、 10月10日の朝10時にオープンを予定

 幻(?)の弦牧トリオ

――以前、私も客席にいましたが、アメリカ村の三津寺会館で弦牧トリオ(弦牧、當村、山本)が演奏しましたよね。そのときのお店、<えん>はどちらかと言えば、関西ブルースやフォーク、映画関係者などが集まるお店として知られていますが、どういう経緯で演奏されることになったのでしょうか?

しらきさんはめっちゃ<えん>で演奏させたいんですね(笑)あちらには西山さんに連れられてよく飲みに行ってたんですよ。バイト終わりに谷町9丁目からアメ村までタクシーに乗って行ってました。西山さん歩くん嫌いなんですよ。それで、ライヴもたまにさせてもろたり。 西山さん亡くなってしばらく後にお店に顔を出したら、ママのひろ子さんがまたうちでもジャズやろうや!言うてくれたんです。それで、ちょうどそのときに、當村くんと何も決めずに何かしたいなっていうのも、頭にあったんです。その2つが繋がってやることになりました。 今はお酒をやめてしまったので足が遠のいてましたけど、また顔出してきますねー。

――期待してます!

 
横尾昌二郎氏と弦牧氏

<後日談>

スカイビルの花見小路特別ステージでのライヴの合間に話をうかがいました。こちらは弦牧さんが学生時代にバイトをしていたトンカツ屋さんがあるそうで、当日はそういった縁で決まったステージだとか。そういうのもなんだか弦牧さんの人柄を表しているような気がしました。

しらきたかね

『PORTRAIT』インタビューVol.3 横尾昌二郎

「気合と根性と愛でやっているんで(笑)」

横尾昌二郎

今西セクステットだけでなく、自身がリーダーを務めるビッグ・バンド、YKOO BB!!やハード・バップ研究会、その他、種々様々なセッションにも顔を出す、まさにファースト・コールのトランぺッター。そんな横尾さんと言えば、ゴリゴリのハード・バッパーな印象だが、お話をうかがったところ意外や意外。そうでもないとのこと。
そんな彼に新作や演奏のことだけでなく、ミュージシャン、表現者としての考え、リーダー・バンドや作編曲のことなど幅広く聞いてみた。

●新作『ポートレイト』について
――新作で「Take The A Train」をアレンジされていますが?

「Poinnsiana」って曲があるじゃないですか?いわゆる、ジャズ・スタンダードっていうのっていうんですかね?あの曲は。弦牧さんにあれっぽいリズムを叩いて欲しいとお願いして、で、途中からファンクになるというのも指定しました。

――初めからセクステット用にアレンジされたんでしょうか?

はじめはワン・ホーン用にと思っていたんですが、3管でも面白いかなあ、と思って。そのあとで、さらに拡張してビッグ・バンドのアレンジもあるんですが。
A・トレインのメロディに、リズムがトンツク、トンツク、トンツク、トッパァンってやったら気持ちいいんじゃないかと思って、リズムだけ指定して2~3回演奏していたんですが、3管でもいけるなと思って。新しく3管だからできるセクションとか作ったりして、エンディングを付け加えたんです。

――エンディング、ちょっとファンキーでかっこいいですよね。

ちょっとアホな感じの暴走列車みたいな(笑)

――今西セクステットでは珍しい感じですよね。

横尾さんと弦牧さん。実は大学の後輩と先輩である。

今西さんとしては、別の人のアレンジとか作曲を入れていきたいみたいなんですよね。違うテイストを入れてみたいということなんでしょうけど。だから、過去にも何曲かぼくがアレンジを担当している曲があるんですよ。珍しいパターンだと今西さん作曲でぼくがアレンジという曲があります。3枚目のアルバム『Weather』の1曲目のタイトル曲なんですけど。「テイストが似てしまうから、アレンジ書いて欲しい」と言われたから、書いたんですけど、やっぱり今西さん作曲でこのセクステットでやると同じテイストで書いてしまうんですよね(笑)「今西さんやったらこういう音使いするだろうなあ」とか考えちゃう、と。

――今西さんにインタビューしたときもメンバーにももっと書いて欲しい、っておっしゃっていました。ただ、中々アルバムをつくるとか言う話にならないと、お互いにお尻に火がつかない、とも言っていました。

そうですね。時間がかかるし、頼みづらいというのもあるでしょうねえ。プロの作編曲家だったら、作曲の技術があるんで、ピアノの前に座ってパーッと書いていけると思うんですけど、ぼくはその勉強を専門ではしていないので、取っ掛かりを思いつくまでが大変ですね。それまでは普通に生活をしてひたすら待つしかないんです(笑)もちろん、いつもと違う練習してみたりだとか、音楽を聴いてみたりだとかコピーしてみたりだとかはするんですけど。ひどいときだと夢の中でラッパ吹いているフレーズをそのまま使ってみたこともあります。めっちゃ完全に運に頼っているんですけど(笑)まあ、もちろんそこから広げていってまとめることができるかという問題はあるんですけど。専業の作家じゃなければやっぱり取っ掛かりが大変だと思いますね。ぼくだとなんだかんだと考えるのに1か月くらいかかりますかね。プロの作編曲家じゃなかったら、構想のとかっかりにみなさん悩まれるんじゃないでしょうか?

●横尾さんって、ハード・バッパーじゃないの?

――全曲オリジナルのアレンジが魅力のビッグ・バンド、YOKOO BB!!のリーダーを務めておられますが、そちらのバンドのアレンジはどのようにされているんでしょうか?

そうですねえ、さっき言ったことなんかをしたり、歩きながらアレンジする曲のメロディをずっと口ずさんだりして、いろいろ思いついたら書き始めるっていうスタイルなんです。それから、手書きでスコアを書き始めるんですけど、だいたいそれが延べでいうと1曲10時間くらいです。そして、パソコンに入力して、パート譜をつくったり。ただ、大作になったりすると、その作業に20時間かかったり、構想に半年かかったりすることもあります。専業職のようにアレンジや作曲に没頭するわけじゃないですからね、ライヴや練習もしながらですからどうしてもそれくらいかかりますかね。気合と根性と愛でやってるんで(笑)

――ファンからみると横尾さんってハード・バッパーってイメージが強いと思うんですが、なぜ、ビッグ・バンドを主宰しようと思われたんですか?

確かに、そういうイメージが年々強くなっている気もしますね。ただ、ぼくは元々ビッグ・バンドの人なんです。中学生のときからビッグ・バンドの部活をしていたんです。その中学校は吹奏楽部の人数が足りないから、その当時の顧問がジャズ好きだということでビッグ・バンドの部活にしたという学校だったんです。高校進学に際しても両親の薦めもあって、せっかくだからということで、ビッグ・バンドのある学校にしました。大学以降も社会人のビッグ・バンドに入ったり、ずっと関わってきているんですよね。だから、いつか自分のビッグ・バンドをやりたいと思っていました。で、やるからにはオリジナル・アレンジじゃないと意味がない、と。

――でも、ビッグ・バンドって運営が大変だと思うんですが。

スケジュール調整が一番の大仕事ですね。それが8割くらいじゃないですかね。リハーサルと本番と。それが決まれば、あとはやるだけです。

――リハーサルはけっこうされるんですか?

インタビューはライヴ前に喫茶店で

本番前に一回だけです。ずっと同じメンバーでやっているんで。スケジュール調整をきっちりやっている理由もそれで、メンバーが一人変わったら、また全曲リハ―サルやらなくちゃならないんですから。馴れたメンバーでやりたいというのもありますけど。みんないろいろチャレンジしてくれますし、その方が音楽性もあがります。

――そういう意味ではどういうメンバーと一緒にやるかも重要そうですね。

うーん、バンドを愛してくれそうなミュージシャンに声をかけていますね。ただ、単に上手い人を集めるのは簡単ですけど。バンドのためにいろいろ働いてくれるミュージシャンってのはありがたいです。それと好き勝手にやってくれる、っていうのも理想ですね。「これをこんな風に演奏してくれ」「はい、わかりました」じゃ、ジャズじゃないんで。「君はどう」「ぼくはこう思います」ってのが、あわさってできるのがジャズですし。カウント・ベイシーとか聴いていてもそうなんですよ。もちろん、自分勝手にやってもらって違うときは「ごめん、それ違うわ」っていうんですけど。
そういったところで、瞬発力的なところで求めているのはアルト・サックスの武藤(浩司)くんとかね。爆発力がすごいじゃないですか。あと、結果的にサックス・セクションをまとめてくれたのは脱退しちゃったけどテナー・サックスの髙橋(知道)さん。全体的な能力が高いし、一番先輩で経験豊富だったんで。それから、リズム・セクションは肝やと思っているんですけど、ギターの藪(下ガク)ちゃんなんかはいろいろ意見してくれるし、アンサンブルにカラーをつけてくれるように実験もしてくれる。ベースの光岡さんも事前に譜面チェックして設計してくれるし、バンドを愛してくれています。ドラムスの齋藤(洋平)さんは忙しいけど、センスが抜群なんでね。ビッグ・バンドはドラマーありきなんで。1対16みたいなところもあるし、自分だけ音階がない違う楽器ですし。だから、ぼく、生まれ変わったらドラマーになりたいんです。バンドをコントロールできるから(笑)

●ミュージシャンたるものかくかるべし
――やっぱり、先ほど話されたことというのは、逆に横尾さんが今西セクステットなどに参加されるときもそう考えられているんでしょうか。

自分の言いたいことをパっと即応できるようには気をつけてますよね。「こうして欲しい」「はい、わかりました」って言っている時点で足を引っ張っているわけですから。言われる前にやらなければいけないと思うんです。
ぼくがバンドに入ることでよくなって欲しいと思いますし、トランぺッターは山ほどいますから、ぼくを雇うことによってこんなにいいことがあるよ、っていうのはアピールしていきたいですよね。たとえば、今西さんの譜面でも「ここはこうした方がいいんちゃう?」とかいいますし。
ただ上手なだけなら1ですよね?バンドの戦力としては。アレンジ・作曲ができるとプラス0.2とか、キュー出しとか今西さんがソロ吹いているときに次の展開を考えられると、またいくつかプラスされていって、最終的には2とかになれればいいですよね。ぼくはそうやってジャム・セッションとかでアピールして、キャリアを広げてきたんで。

――うーん、それってプロならではの厳しさって感じもしますねえ。

いや、それはプロ、アマ関係ないですよ。音楽ってそういうもんだと思います。

――横尾さんは落語の話芸について研究されていたり、ステージングについてもお考えがあると思うんですけど。

エンターテイメントっていうことを考えると、ぼくはジャズのライヴでもある程度必要だと思うんですよ。かつて、あるショーにでていたときがあるんですけど、その前年はオーディションで落とされているんです。その時に、目の前の人を楽しませる努力をしていなかったなあ、と思ったんですよ。ライヴならお客さん、オーディションなら審査する人。とにかく目の前の人を楽しませる最低限の努力はしなくちゃいけないな、と反省したんです。それがわざとらしかったらダメなんですけど、自然な振る舞いでショーとして成立させないと。MCが苦手だったら音楽で勝負して、ネガティブなことを言わず、あんまり喋らなかったらいいんですよ。

●ハード・バップ研究会と今西セクステット
――そういえば弦牧さんにインタビューしたら、「ハード・バップ研究会も横尾くんがいろいろやってくれるから大丈夫です」とか信頼されていました。

そうですか(笑)弦牧さんは譜面が苦手で、全部、キメとか曲を覚えてもらわないといけないんで。でも、何も狙わずに自分の思う通りにやってあれだけジャズのフィーリングがでるって人はいないですから。天然記念物ですよ!

――ハード・バップ研究会と今西セクステットはやっぱり違いますか?

全然、違います。今西さんの曲を演奏するか、伝統的なスタイルで演奏するか。ただ、出た音は似るとは思うんですけどね。ぼくがトップ吹いて、今西さんがボトムを固めて、ベースとドラムスも一緒ですし。

――ハード・バップ研究会結成のきっかけは?

あれは志水愛(pf)がハード・バップやりたい、よし、じゃあ、やろうって感じです。で、ぼくが総理大臣で彼女が象徴ということで(笑)

――権威と実権がある人が分かれているんですね!

ジャズ・ジャイアンツの曲をやるし、アルバムを発表するってスタイルじゃないですから。今西さんのところは、今西さんの曲をみんなで練って、アルバムつくって、それでライヴをやるってバンドですから、両者は全然、違いますね。ハード・バップ研究会はレコードで聴いていたあの曲を関西の名人たちが再演するという意味では面白いバンドだと思います。

●改めて新作について
――前作と今作の違いってありますか?

今西佑介セクステット

そうですねえ、今西さんの作曲が洗練されてきていますよね。あと、メンバーもそれぞれ上手くなってきているし。あと、今回はスタジオもよかったですしね(笑)高いだけあって。「めっちゃお金かけるやん」って横で思っていましたもん。写真もいいスタジオで腕のいいカメラマンに撮ってもらいました。

――當村さんが今作は横尾さんが活き活きしていたって仰ってました。

そうなんかなあ?回を増すごとに、CDを作る度に思うことは、弦牧さんが音楽的に巧くなっている、っていうのはね、感じますね。

――今までで一番、ジャズっぽくて臨場感があるアルバムだな、と思ったんですけど。

今西さんも心のどこかにハード・バップ研究会の影響があるかもしれないですね。昔のレジェンドたちの曲に触れているという。

――そういえば、今西さんって、かつてのティンパンアレイの作曲家みたいに、唄ものっぽい曲が多いと思うんですよね。ただ、今作はちょっとリフものっぽいってのを感じました。

そうですねえ、そうかもしれない。

――今西曲にポップスの要素がある、っていうのはいかがですか?

そうですねえ、前作の「Touch Of Spring」とかはポップス志向っぽいですよね。ただ、まあ、基本的にはジャズだと思いますよ。ほとんどドミナント進行ですし。キャッチ―というか、メロディがわかり易いっていうのが魅力だと思います。

<後日談> インタビュー中にもあった通り、目の前にいる私にもしっかり楽しませてくださるように様々なことを出し惜しみなく答えてくださり、おかげで面白いインタビューになったのではないかと自画自賛しております(笑)また、音楽制作についても具体的に話してくださったので、横尾さんというミュージシャンとその音楽の存在が良い意味でぐっと身近に感じられました。

しらきたかね