『PORTRAIT』インタビューVol.3 横尾昌二郎

「気合と根性と愛でやっているんで(笑)」

横尾昌二郎

今西セクステットだけでなく、自身がリーダーを務めるビッグ・バンド、YKOO BB!!やハード・バップ研究会、その他、種々様々なセッションにも顔を出す、まさにファースト・コールのトランぺッター。そんな横尾さんと言えば、ゴリゴリのハード・バッパーな印象だが、お話をうかがったところ意外や意外。そうでもないとのこと。
そんな彼に新作や演奏のことだけでなく、ミュージシャン、表現者としての考え、リーダー・バンドや作編曲のことなど幅広く聞いてみた。

●新作『ポートレイト』について
――新作で「Take The A Train」をアレンジされていますが?

「Poinnsiana」って曲があるじゃないですか?いわゆる、ジャズ・スタンダードっていうのっていうんですかね?あの曲は。弦牧さんにあれっぽいリズムを叩いて欲しいとお願いして、で、途中からファンクになるというのも指定しました。

――初めからセクステット用にアレンジされたんでしょうか?

はじめはワン・ホーン用にと思っていたんですが、3管でも面白いかなあ、と思って。そのあとで、さらに拡張してビッグ・バンドのアレンジもあるんですが。
A・トレインのメロディに、リズムがトンツク、トンツク、トンツク、トッパァンってやったら気持ちいいんじゃないかと思って、リズムだけ指定して2~3回演奏していたんですが、3管でもいけるなと思って。新しく3管だからできるセクションとか作ったりして、エンディングを付け加えたんです。

――エンディング、ちょっとファンキーでかっこいいですよね。

ちょっとアホな感じの暴走列車みたいな(笑)

――今西セクステットでは珍しい感じですよね。

横尾さんと弦牧さん。実は大学の後輩と先輩である。

今西さんとしては、別の人のアレンジとか作曲を入れていきたいみたいなんですよね。違うテイストを入れてみたいということなんでしょうけど。だから、過去にも何曲かぼくがアレンジを担当している曲があるんですよ。珍しいパターンだと今西さん作曲でぼくがアレンジという曲があります。3枚目のアルバム『Weather』の1曲目のタイトル曲なんですけど。「テイストが似てしまうから、アレンジ書いて欲しい」と言われたから、書いたんですけど、やっぱり今西さん作曲でこのセクステットでやると同じテイストで書いてしまうんですよね(笑)「今西さんやったらこういう音使いするだろうなあ」とか考えちゃう、と。

――今西さんにインタビューしたときもメンバーにももっと書いて欲しい、っておっしゃっていました。ただ、中々アルバムをつくるとか言う話にならないと、お互いにお尻に火がつかない、とも言っていました。

そうですね。時間がかかるし、頼みづらいというのもあるでしょうねえ。プロの作編曲家だったら、作曲の技術があるんで、ピアノの前に座ってパーッと書いていけると思うんですけど、ぼくはその勉強を専門ではしていないので、取っ掛かりを思いつくまでが大変ですね。それまでは普通に生活をしてひたすら待つしかないんです(笑)もちろん、いつもと違う練習してみたりだとか、音楽を聴いてみたりだとかコピーしてみたりだとかはするんですけど。ひどいときだと夢の中でラッパ吹いているフレーズをそのまま使ってみたこともあります。めっちゃ完全に運に頼っているんですけど(笑)まあ、もちろんそこから広げていってまとめることができるかという問題はあるんですけど。専業の作家じゃなければやっぱり取っ掛かりが大変だと思いますね。ぼくだとなんだかんだと考えるのに1か月くらいかかりますかね。プロの作編曲家じゃなかったら、構想のとかっかりにみなさん悩まれるんじゃないでしょうか?

●横尾さんって、ハード・バッパーじゃないの?

――全曲オリジナルのアレンジが魅力のビッグ・バンド、YOKOO BB!!のリーダーを務めておられますが、そちらのバンドのアレンジはどのようにされているんでしょうか?

そうですねえ、さっき言ったことなんかをしたり、歩きながらアレンジする曲のメロディをずっと口ずさんだりして、いろいろ思いついたら書き始めるっていうスタイルなんです。それから、手書きでスコアを書き始めるんですけど、だいたいそれが延べでいうと1曲10時間くらいです。そして、パソコンに入力して、パート譜をつくったり。ただ、大作になったりすると、その作業に20時間かかったり、構想に半年かかったりすることもあります。専業職のようにアレンジや作曲に没頭するわけじゃないですからね、ライヴや練習もしながらですからどうしてもそれくらいかかりますかね。気合と根性と愛でやってるんで(笑)

――ファンからみると横尾さんってハード・バッパーってイメージが強いと思うんですが、なぜ、ビッグ・バンドを主宰しようと思われたんですか?

確かに、そういうイメージが年々強くなっている気もしますね。ただ、ぼくは元々ビッグ・バンドの人なんです。中学生のときからビッグ・バンドの部活をしていたんです。その中学校は吹奏楽部の人数が足りないから、その当時の顧問がジャズ好きだということでビッグ・バンドの部活にしたという学校だったんです。高校進学に際しても両親の薦めもあって、せっかくだからということで、ビッグ・バンドのある学校にしました。大学以降も社会人のビッグ・バンドに入ったり、ずっと関わってきているんですよね。だから、いつか自分のビッグ・バンドをやりたいと思っていました。で、やるからにはオリジナル・アレンジじゃないと意味がない、と。

――でも、ビッグ・バンドって運営が大変だと思うんですが。

スケジュール調整が一番の大仕事ですね。それが8割くらいじゃないですかね。リハーサルと本番と。それが決まれば、あとはやるだけです。

――リハーサルはけっこうされるんですか?

インタビューはライヴ前に喫茶店で

本番前に一回だけです。ずっと同じメンバーでやっているんで。スケジュール調整をきっちりやっている理由もそれで、メンバーが一人変わったら、また全曲リハ―サルやらなくちゃならないんですから。馴れたメンバーでやりたいというのもありますけど。みんないろいろチャレンジしてくれますし、その方が音楽性もあがります。

――そういう意味ではどういうメンバーと一緒にやるかも重要そうですね。

うーん、バンドを愛してくれそうなミュージシャンに声をかけていますね。ただ、単に上手い人を集めるのは簡単ですけど。バンドのためにいろいろ働いてくれるミュージシャンってのはありがたいです。それと好き勝手にやってくれる、っていうのも理想ですね。「これをこんな風に演奏してくれ」「はい、わかりました」じゃ、ジャズじゃないんで。「君はどう」「ぼくはこう思います」ってのが、あわさってできるのがジャズですし。カウント・ベイシーとか聴いていてもそうなんですよ。もちろん、自分勝手にやってもらって違うときは「ごめん、それ違うわ」っていうんですけど。
そういったところで、瞬発力的なところで求めているのはアルト・サックスの武藤(浩司)くんとかね。爆発力がすごいじゃないですか。あと、結果的にサックス・セクションをまとめてくれたのは脱退しちゃったけどテナー・サックスの髙橋(知道)さん。全体的な能力が高いし、一番先輩で経験豊富だったんで。それから、リズム・セクションは肝やと思っているんですけど、ギターの藪(下ガク)ちゃんなんかはいろいろ意見してくれるし、アンサンブルにカラーをつけてくれるように実験もしてくれる。ベースの光岡さんも事前に譜面チェックして設計してくれるし、バンドを愛してくれています。ドラムスの齋藤(洋平)さんは忙しいけど、センスが抜群なんでね。ビッグ・バンドはドラマーありきなんで。1対16みたいなところもあるし、自分だけ音階がない違う楽器ですし。だから、ぼく、生まれ変わったらドラマーになりたいんです。バンドをコントロールできるから(笑)

●ミュージシャンたるものかくかるべし
――やっぱり、先ほど話されたことというのは、逆に横尾さんが今西セクステットなどに参加されるときもそう考えられているんでしょうか。

自分の言いたいことをパっと即応できるようには気をつけてますよね。「こうして欲しい」「はい、わかりました」って言っている時点で足を引っ張っているわけですから。言われる前にやらなければいけないと思うんです。
ぼくがバンドに入ることでよくなって欲しいと思いますし、トランぺッターは山ほどいますから、ぼくを雇うことによってこんなにいいことがあるよ、っていうのはアピールしていきたいですよね。たとえば、今西さんの譜面でも「ここはこうした方がいいんちゃう?」とかいいますし。
ただ上手なだけなら1ですよね?バンドの戦力としては。アレンジ・作曲ができるとプラス0.2とか、キュー出しとか今西さんがソロ吹いているときに次の展開を考えられると、またいくつかプラスされていって、最終的には2とかになれればいいですよね。ぼくはそうやってジャム・セッションとかでアピールして、キャリアを広げてきたんで。

――うーん、それってプロならではの厳しさって感じもしますねえ。

いや、それはプロ、アマ関係ないですよ。音楽ってそういうもんだと思います。

――横尾さんは落語の話芸について研究されていたり、ステージングについてもお考えがあると思うんですけど。

エンターテイメントっていうことを考えると、ぼくはジャズのライヴでもある程度必要だと思うんですよ。かつて、あるショーにでていたときがあるんですけど、その前年はオーディションで落とされているんです。その時に、目の前の人を楽しませる努力をしていなかったなあ、と思ったんですよ。ライヴならお客さん、オーディションなら審査する人。とにかく目の前の人を楽しませる最低限の努力はしなくちゃいけないな、と反省したんです。それがわざとらしかったらダメなんですけど、自然な振る舞いでショーとして成立させないと。MCが苦手だったら音楽で勝負して、ネガティブなことを言わず、あんまり喋らなかったらいいんですよ。

●ハード・バップ研究会と今西セクステット
――そういえば弦牧さんにインタビューしたら、「ハード・バップ研究会も横尾くんがいろいろやってくれるから大丈夫です」とか信頼されていました。

そうですか(笑)弦牧さんは譜面が苦手で、全部、キメとか曲を覚えてもらわないといけないんで。でも、何も狙わずに自分の思う通りにやってあれだけジャズのフィーリングがでるって人はいないですから。天然記念物ですよ!

――ハード・バップ研究会と今西セクステットはやっぱり違いますか?

全然、違います。今西さんの曲を演奏するか、伝統的なスタイルで演奏するか。ただ、出た音は似るとは思うんですけどね。ぼくがトップ吹いて、今西さんがボトムを固めて、ベースとドラムスも一緒ですし。

――ハード・バップ研究会結成のきっかけは?

あれは志水愛(pf)がハード・バップやりたい、よし、じゃあ、やろうって感じです。で、ぼくが総理大臣で彼女が象徴ということで(笑)

――権威と実権がある人が分かれているんですね!

ジャズ・ジャイアンツの曲をやるし、アルバムを発表するってスタイルじゃないですから。今西さんのところは、今西さんの曲をみんなで練って、アルバムつくって、それでライヴをやるってバンドですから、両者は全然、違いますね。ハード・バップ研究会はレコードで聴いていたあの曲を関西の名人たちが再演するという意味では面白いバンドだと思います。

●改めて新作について
――前作と今作の違いってありますか?

今西佑介セクステット

そうですねえ、今西さんの作曲が洗練されてきていますよね。あと、メンバーもそれぞれ上手くなってきているし。あと、今回はスタジオもよかったですしね(笑)高いだけあって。「めっちゃお金かけるやん」って横で思っていましたもん。写真もいいスタジオで腕のいいカメラマンに撮ってもらいました。

――當村さんが今作は横尾さんが活き活きしていたって仰ってました。

そうなんかなあ?回を増すごとに、CDを作る度に思うことは、弦牧さんが音楽的に巧くなっている、っていうのはね、感じますね。

――今までで一番、ジャズっぽくて臨場感があるアルバムだな、と思ったんですけど。

今西さんも心のどこかにハード・バップ研究会の影響があるかもしれないですね。昔のレジェンドたちの曲に触れているという。

――そういえば、今西さんって、かつてのティンパンアレイの作曲家みたいに、唄ものっぽい曲が多いと思うんですよね。ただ、今作はちょっとリフものっぽいってのを感じました。

そうですねえ、そうかもしれない。

――今西曲にポップスの要素がある、っていうのはいかがですか?

そうですねえ、前作の「Touch Of Spring」とかはポップス志向っぽいですよね。ただ、まあ、基本的にはジャズだと思いますよ。ほとんどドミナント進行ですし。キャッチ―というか、メロディがわかり易いっていうのが魅力だと思います。

<後日談> インタビュー中にもあった通り、目の前にいる私にもしっかり楽しませてくださるように様々なことを出し惜しみなく答えてくださり、おかげで面白いインタビューになったのではないかと自画自賛しております(笑)また、音楽制作についても具体的に話してくださったので、横尾さんというミュージシャンとその音楽の存在が良い意味でぐっと身近に感じられました。

しらきたかね

『PORTRAIT』インタビュー

セクステットの5th Album “Portrait”を作製するにあたりCDのライナーノーツを作家のしらきたかねさんに依頼しました。
しらきさんは快諾してくださり、さらにはライナーを書くにあたりバンドメンバーへインタビューを行いたい、ライナーノーツに使わなかった話はこのホームページで公開して欲しいという、僕にしてみればどう考えても有難い流れになりました。

さて、そのインタビュー記事達、どれもとても濃い内容になっております。
どうぞお楽しみ下さい。

『PORTRAIT』インタビューVol.1 當村邦明

『PORTRAIT』インタビューVol.2 光岡尚紀

『PORTRAIT』インタビューVol.3 横尾昌二郎

近日公開予定
『PORTRAIT』インタビューVol.4 柳原由佳
『PORTRAIT』インタビューVol.5 弦牧潔
『PORTRAIT』インタビューVol.6 永田有吾
『PORTRAIT』インタビューVol.7 今西佑介

2018年10月のライブスケジュール

10/11(木)ポチ(明石)
今西佑介セクステット 5th CD “PORTRAIT”リリース記念ライブ

10/14(日)
大津ジャズフェスティバル
http://otsu-jazz.jp

スカイプラザ浜大津 響
14:00-
今西佑介セクステット

同日
客船ビアンカ
ビアンカ・プレミアム・ジャズクルーズ
大津港発着 18:30-21:00
お一人様 8,500円(ご夫婦割/お二人で16,000円)
※乗船料・ブッフェ料理代・フリードリンク(ワイン・ソフトドリンク)込
※他割引券との併用不可
ご予約・お問い合わせ
琵琶湖汽船予約センター
℡077-524-5000
http://www.biwakokisen.co.jp/event/jazz_2018.php

10/17(水)Jazz On Top(梅田)
Jesse Forest

10/19(金)Born Free(摂津本山)
ハードバップ研究会

気軽に聴きに来て下さい。
よろしくお願いします。(^^)

2018年9月27日

無事、セクステット5thアルバム『PORTRAIT』の先行販売ライブ2日終わりました。
来て下さった皆さん、本当にありがとうございました。

他の仕事でもよく顔を合わせるメンバーなのですが、前回のセクステットのライブから2ヶ月ほど開いていたこともあり、なんだか懐かしく感じました。

右耳の急性低音障害型感音難聴という覚えにくい病気は相変わらずで、演奏が盛り上がると「あれ?光岡さんおらんくなった?」ってなる瞬間は何度かあったんですが、ずっといてくれたみたいですね。笑
耳が変なってからも何度かライブしてて、そりゃまー少しやりにくいんですが、メンバーやお客さんの反応を見る限り、あまり前と変わらないみたいで、僕がやりにくいだけの問題なのか、と思うとなんだか安心しました。
僕が頑張ればそれで済むんだなーと。
治るまで頑張りますー。

なにはともあれ、お客様と包容力のあるバンドメンバーのおかげで楽しくライブ出来ました。
ありがとうございます。

J-POPの人気ミュージシャンのように何万人の前でライブする事も素敵かも知れませんが(そんなんやったことないけど)、僕はこういうほぼほぼ生音のアコースティックなハコでやる、お客さん一人一人の顔を見ながら出来るライブが一番楽しくて幸せな気持ちになれる気がします。

いやー、本当に皆さんありがとうございました。

次回のセクステットは
10/11(木)ポチ(明石)
で、なんとピアニスト2人とも出演します。
楽しみです。
もちろんCDもいっぱい持って行きます。
いっぱい買って下さい。
そんで今度こそ耳治ってて欲しいです。笑

あ、ライブでは発表したんですが、『PORTRAIT』の全国発売日が決定しました。
ライブに来れない遠方の皆様方、メモのご用意を。

11月14日水曜日です。

それまで、僕はもちろん、バンドメンバーそれぞれのライブで先行して手売り始めてます。
関西にお住いの方はどうぞライブにてCDもどうぞよろしくお願いします。

『PORTRAIT』インタビューVol.2 光岡尚紀

「このバンドは自分の世界を広げてくれる」


今西佑介セクステット

様々なバンドやセッションに参加されている引っ張りダコのベーシストで、今西セクステットでは最年長ということもあり、メンバーからの信頼も篤いミュージシャン。それはインタビューにおいてもまたしかり。たくさん話を聞かせてもらったが、どこを切ってもそのまま記事になるという聞き手からしても有難いイタンビュイーだったのだ。
バッキングにソロにバンドの屋台骨を支え続ける光岡さんに新作、今西オリジナル曲、果てはバンドでのベーシストの役割や音楽についての考え方を聞いてきた。

●新作『ポートレイト』について
――今西佑介セクステットの新作『ポートレイト』について聞かせて下さい。

ぼくは録音自体が楽しかったのですね。アルバムの制作を重ねるごとにオリジナリティが増している今西佑介の音楽を作品にしていくという作業が面白かったです。

――今西さんが光岡さんをイメージして創られた曲、M5.「Smile Maker」についてはいかがでしょうか?

いやあ、嬉しいですよ!曲調も大好きっ。それも考えて創ってくれたんだと思います。

これ佑介に言ったことあるのか、定かじゃないんですが、あの曲はキーがA♭なんですよ。ぼく、A♭の響きが好きなんです。なんで好きかはわかんないんですけど。この曲いいなあ、と思って後で調べてみたりすると、ほとんどA♭なんですよ。だから、もし、覚えていてくれたんやったら嬉しい。でも、弾くんやったら、Gが一番いいんですけど(笑)


インタビューでは話が脱線することも。光岡さんとは、しばし90年代のメロコア話で盛り上がったりしました。

――ライヴで光岡さんの演奏を聴いていたら、速弾きもされるしソロの手法とかみていたら、マット・ペンマン(b)とかもっとコンテンポラリーなミュージシャンというイメージがあったんで、曲調に関しては意外だったんですが。



マット・ペンマン(b)も好きなんですが、レイ・ブラウン(b)が好きなんです。だから、ああいう粋な歌ものという感じの曲調もどストライクですね。

――でも、ソロはレイ・ブラウン(b)じゃないですよね(笑)

そこは一緒にする必要ないですし、ぼく(オリジナル)じゃなきゃダメじゃないですか。

●ベーシストとして
――「ベーシストとしてバンドを支える」という意味では今西セクステットと他のバンドで違いはありますか?

うーん、あんまりこのバンドのときはこうしようとかいうのはないんですよ。ただ、今西バンドの場合、ライヴをするときにいろんなところに曲が大きく変化していくんです。それはドラマーのつるちゃん(弦牧)の影響がある。だから、めっちゃタフなときがあって、そういうときはぼくがいわゆる「ベーシスト」として支える。他のバンドで、もしピアノの人やギターの人がそういう役割をしてくれるんだったら、ぼくがもう少し遊びに出ていくということはしますしね。

各バンドによってそういう違いはあるんですが、演奏を始める前からそういうことを決めていることはないですね。もちろん、ビッグ・バンドではしっかり支えますし、ぼくがリーダーのバンドだったら、もう少しいろんなことをやる。だから、そのときのリーダーの意図にちゃんと沿えているかどうか、展開を考える。フィルを一つに入れるにしても、ぼくがそのとき何をしたらいいかを一番に考えています。みんなと一緒になってバァーっと自由に弾いていた方がいいのか、真っ直ぐ走っておいた方がいいのか。まあ、結局、それも自分の価値観でしかないんですけどね。


ライヴ終了後に横尾(tp)さんと

●バンドのメンバーについて
――リズム隊としてコンビを組むにあたって、ドラマー弦牧さんに関してはどうですか?

つるちゃんは唯一無二なんですよ、やっぱり。ときどき「お前はちゃんとテンポ・キープせんかい!」とかライヴ中に思うこともあるけど、それはバンドを発展させようという意識が強いのかな。それが素晴らしいですね。

みんながそれでいいんか、というとそうでもないんですけどね。そういうときは、ぼくが冷静に対処してバランスをとる。弦牧はいい爆弾をいっぱいもっていて、バンドを予想もしない方向にもっていってくれる。

今西くんが結成にあたって元々もっていたイメージとしては、現代に存在するジャズ・メッセンジャーズということは念頭においていたと思う。作る曲も現代的なハーモニーが使われていたりするんだけど、そっちだけが前にでていたら今風の平凡なジャズ・バンドになっちゃう。そこで、ジャズ・メッセンジャーズな薫りをだすために、ぼくと弦ちゃんを雇っているんだな、と思うんですけど。今西バンドを聴いてくださっている人にはコンテンポラリーな音楽だと思われているんでしょうけど、ただのそういうバンドにならないように、毎回、考えるから自分にとっても勉強になりますね。単に、自分のリーダー・バンドをやっているだけではそうはならないですよね。今西セクステットは自分の世界を広げてもらったと思っています。

――今回、個性的なアドリブをされる當村さんにソロのときのバッキングについてどう思われているかというインタビューをしたんですが、逆に光岡さんから當村さんのソロをバッキングしているときはどういう意識でされているんでしょうか?

うーん、當村は回りの音をめっちゃ聴いているなあ、とは思うんですが、こちらとしては當村っていうより、當村のバッキングしているときの弦牧のバッキングをしているっていう感触の方が強いけど。(笑)

――光岡さんが弾くのをやめて、弦牧さんと當村さん二人だけで走りまくってとんでもない方向に行くって言うのをライヴで何度か観たことがあります(笑)

ああいうのは弦ちゃんじゃないと中々起きない現象ですよね。いい意味で。

――新作に参加されているピアニストに関しては?

お二人とも素晴らしいし、ちょっと色が違うから、曲の振り分けとか面白いですよね。ただ、お客さんがぼくをスウィンギーなベーシストだとか言うのはいいんですけど、(バンド・メンバーの)ぼくがあなたはこういう印象だからこうです、とかいうのは好きじゃないんです。というのは、そういうことを言っていくと段々と世界が狭くなっていくんで。得意、不得意だとか、どういうタイプのミュージシャンかというのはあるんですけど、先にそうだからと言ってしまって決めてしまうのはそればっかりになってしまって、面白くないですよね。それは佑介とも話しましたね。


永田さん(pf)と光岡さん

でも、このバンドのピアニストはめっちゃ大変だと思います。難しいハーモニーもありますし、3管なわけですから、(管楽器とぶつからないように)避けなきゃいけない音もでてくるんで、耳がよくないと。ソロも絶対、回ってくるし。ぼくと弦ちゃんがオールド・スタイルだとすると、3管は現代的。その間に入る役目ですから、大変だと思います。今西バンドってリズム・セクションにはコードしかかれていない譜面が配られるんですけど、前任の加納くんは自分でメロの場所も書き加えていたし、(柳原)由佳ちゃんもやってたと思う。(永田)有吾もやってるんちゃうんかな?

●今西オリジナル曲について
――當村さん(ts)さんのインタビューで今西さんの作曲はポップスの要素がある、って話がでてきたんですが。

ぼくもそう思います。メロディーがしっかりあるでしょ、今西バンドの一番の武器だと思うんです、ポップでキャッチ―だというのは。前作に収録されている「Touch of Spring」とかその色が強いと思います。ただ、単純にそうだというわけではないんです。ハーモニーを紐解くとそうじゃない。3コードで弾いたら、ポップスとして成立するくらいメロディーがキャッチ―でしょ?でも、3管のハーモニーで演奏されると複雑さがでてきてジャズになるんですよ。ああいう、曲ができるのは今西バンドならではっ!今西くんの才能でしょうねえ。

――ソロ回しがしにくい、なんかもあるのでしょうか?

確かにソロもとりにくい。ベース・ラインを弾いていても難しい。ワン・パターンのバッキングになりがちになるから。やっぱりメロディが強く残るんで。コードもコロコロ変わるんですが、劇的に調性が変化するわけではないんです(この点については柳原さんも指摘されているので、そちらのインタビューも参照して欲しい)。どちらかというと、内声(※)だけが動いていく曲という印象があります。

――最後に、新作について

このバンドではアルバムは曲を紹介するという意味が強いと思うんです。まず、録音ではテーマをしっかり演奏するという意思がありますね。CDでは曲を聴いていただいて、それでライヴに来てアドリブを聴きに来て欲しいですね。

(※) 和音で高い音と低い音ではなく間の音。この場合だと、例えば、下から「ド、シ、ミ、ソ」から「ド、シb、ミb、ソ」というように中の構成音が変わるコード進行のことを指す。

<後日談>
今回、私がお話を聞かせていただいた中で最長時間のインタビューでした。質問すればすぐに反応して下さるし、話すスピードは當村さんの約3倍。ということで、情報量のとても多いインタビューをさせていただきました。おまけに、冒頭で記したようにお話も濃密で、どこをどうとっても即記事になることばかり。なので、再構成に手間取りました。今回はバンドと新作に絞った内容でお送りしましたが、インタビューでは影響を受けた音楽(ジャズだけじゃなく!)や有名なベーシストのフレーズの分析などの話もうかがいました。あと、「みっつんフレーズ」の話も記事にしたかった!

しらきたかね