『PORTRAIT』インタビューVol.3 横尾昌二郎

「気合と根性と愛でやっているんで(笑)」

横尾昌二郎

今西セクステットだけでなく、自身がリーダーを務めるビッグ・バンド、YKOO BB!!やハード・バップ研究会、その他、種々様々なセッションにも顔を出す、まさにファースト・コールのトランぺッター。そんな横尾さんと言えば、ゴリゴリのハード・バッパーな印象だが、お話をうかがったところ意外や意外。そうでもないとのこと。
そんな彼に新作や演奏のことだけでなく、ミュージシャン、表現者としての考え、リーダー・バンドや作編曲のことなど幅広く聞いてみた。

●新作『ポートレイト』について
――新作で「Take The A Train」をアレンジされていますが?

「Poinnsiana」って曲があるじゃないですか?いわゆる、ジャズ・スタンダードっていうのっていうんですかね?あの曲は。弦牧さんにあれっぽいリズムを叩いて欲しいとお願いして、で、途中からファンクになるというのも指定しました。

――初めからセクステット用にアレンジされたんでしょうか?

はじめはワン・ホーン用にと思っていたんですが、3管でも面白いかなあ、と思って。そのあとで、さらに拡張してビッグ・バンドのアレンジもあるんですが。
A・トレインのメロディに、リズムがトンツク、トンツク、トンツク、トッパァンってやったら気持ちいいんじゃないかと思って、リズムだけ指定して2~3回演奏していたんですが、3管でもいけるなと思って。新しく3管だからできるセクションとか作ったりして、エンディングを付け加えたんです。

――エンディング、ちょっとファンキーでかっこいいですよね。

ちょっとアホな感じの暴走列車みたいな(笑)

――今西セクステットでは珍しい感じですよね。

横尾さんと弦牧さん。実は大学の後輩と先輩である。

今西さんとしては、別の人のアレンジとか作曲を入れていきたいみたいなんですよね。違うテイストを入れてみたいということなんでしょうけど。だから、過去にも何曲かぼくがアレンジを担当している曲があるんですよ。珍しいパターンだと今西さん作曲でぼくがアレンジという曲があります。3枚目のアルバム『Weather』の1曲目のタイトル曲なんですけど。「テイストが似てしまうから、アレンジ書いて欲しい」と言われたから、書いたんですけど、やっぱり今西さん作曲でこのセクステットでやると同じテイストで書いてしまうんですよね(笑)「今西さんやったらこういう音使いするだろうなあ」とか考えちゃう、と。

――今西さんにインタビューしたときもメンバーにももっと書いて欲しい、っておっしゃっていました。ただ、中々アルバムをつくるとか言う話にならないと、お互いにお尻に火がつかない、とも言っていました。

そうですね。時間がかかるし、頼みづらいというのもあるでしょうねえ。プロの作編曲家だったら、作曲の技術があるんで、ピアノの前に座ってパーッと書いていけると思うんですけど、ぼくはその勉強を専門ではしていないので、取っ掛かりを思いつくまでが大変ですね。それまでは普通に生活をしてひたすら待つしかないんです(笑)もちろん、いつもと違う練習してみたりだとか、音楽を聴いてみたりだとかコピーしてみたりだとかはするんですけど。ひどいときだと夢の中でラッパ吹いているフレーズをそのまま使ってみたこともあります。めっちゃ完全に運に頼っているんですけど(笑)まあ、もちろんそこから広げていってまとめることができるかという問題はあるんですけど。専業の作家じゃなければやっぱり取っ掛かりが大変だと思いますね。ぼくだとなんだかんだと考えるのに1か月くらいかかりますかね。プロの作編曲家じゃなかったら、構想のとかっかりにみなさん悩まれるんじゃないでしょうか?

●横尾さんって、ハード・バッパーじゃないの?

――全曲オリジナルのアレンジが魅力のビッグ・バンド、YOKOO BB!!のリーダーを務めておられますが、そちらのバンドのアレンジはどのようにされているんでしょうか?

そうですねえ、さっき言ったことなんかをしたり、歩きながらアレンジする曲のメロディをずっと口ずさんだりして、いろいろ思いついたら書き始めるっていうスタイルなんです。それから、手書きでスコアを書き始めるんですけど、だいたいそれが延べでいうと1曲10時間くらいです。そして、パソコンに入力して、パート譜をつくったり。ただ、大作になったりすると、その作業に20時間かかったり、構想に半年かかったりすることもあります。専業職のようにアレンジや作曲に没頭するわけじゃないですからね、ライヴや練習もしながらですからどうしてもそれくらいかかりますかね。気合と根性と愛でやってるんで(笑)

――ファンからみると横尾さんってハード・バッパーってイメージが強いと思うんですが、なぜ、ビッグ・バンドを主宰しようと思われたんですか?

確かに、そういうイメージが年々強くなっている気もしますね。ただ、ぼくは元々ビッグ・バンドの人なんです。中学生のときからビッグ・バンドの部活をしていたんです。その中学校は吹奏楽部の人数が足りないから、その当時の顧問がジャズ好きだということでビッグ・バンドの部活にしたという学校だったんです。高校進学に際しても両親の薦めもあって、せっかくだからということで、ビッグ・バンドのある学校にしました。大学以降も社会人のビッグ・バンドに入ったり、ずっと関わってきているんですよね。だから、いつか自分のビッグ・バンドをやりたいと思っていました。で、やるからにはオリジナル・アレンジじゃないと意味がない、と。

――でも、ビッグ・バンドって運営が大変だと思うんですが。

スケジュール調整が一番の大仕事ですね。それが8割くらいじゃないですかね。リハーサルと本番と。それが決まれば、あとはやるだけです。

――リハーサルはけっこうされるんですか?

インタビューはライヴ前に喫茶店で

本番前に一回だけです。ずっと同じメンバーでやっているんで。スケジュール調整をきっちりやっている理由もそれで、メンバーが一人変わったら、また全曲リハ―サルやらなくちゃならないんですから。馴れたメンバーでやりたいというのもありますけど。みんないろいろチャレンジしてくれますし、その方が音楽性もあがります。

――そういう意味ではどういうメンバーと一緒にやるかも重要そうですね。

うーん、バンドを愛してくれそうなミュージシャンに声をかけていますね。ただ、単に上手い人を集めるのは簡単ですけど。バンドのためにいろいろ働いてくれるミュージシャンってのはありがたいです。それと好き勝手にやってくれる、っていうのも理想ですね。「これをこんな風に演奏してくれ」「はい、わかりました」じゃ、ジャズじゃないんで。「君はどう」「ぼくはこう思います」ってのが、あわさってできるのがジャズですし。カウント・ベイシーとか聴いていてもそうなんですよ。もちろん、自分勝手にやってもらって違うときは「ごめん、それ違うわ」っていうんですけど。
そういったところで、瞬発力的なところで求めているのはアルト・サックスの武藤(浩司)くんとかね。爆発力がすごいじゃないですか。あと、結果的にサックス・セクションをまとめてくれたのは脱退しちゃったけどテナー・サックスの髙橋(知道)さん。全体的な能力が高いし、一番先輩で経験豊富だったんで。それから、リズム・セクションは肝やと思っているんですけど、ギターの藪(下ガク)ちゃんなんかはいろいろ意見してくれるし、アンサンブルにカラーをつけてくれるように実験もしてくれる。ベースの光岡さんも事前に譜面チェックして設計してくれるし、バンドを愛してくれています。ドラムスの齋藤(洋平)さんは忙しいけど、センスが抜群なんでね。ビッグ・バンドはドラマーありきなんで。1対16みたいなところもあるし、自分だけ音階がない違う楽器ですし。だから、ぼく、生まれ変わったらドラマーになりたいんです。バンドをコントロールできるから(笑)

●ミュージシャンたるものかくかるべし
――やっぱり、先ほど話されたことというのは、逆に横尾さんが今西セクステットなどに参加されるときもそう考えられているんでしょうか。

自分の言いたいことをパっと即応できるようには気をつけてますよね。「こうして欲しい」「はい、わかりました」って言っている時点で足を引っ張っているわけですから。言われる前にやらなければいけないと思うんです。
ぼくがバンドに入ることでよくなって欲しいと思いますし、トランぺッターは山ほどいますから、ぼくを雇うことによってこんなにいいことがあるよ、っていうのはアピールしていきたいですよね。たとえば、今西さんの譜面でも「ここはこうした方がいいんちゃう?」とかいいますし。
ただ上手なだけなら1ですよね?バンドの戦力としては。アレンジ・作曲ができるとプラス0.2とか、キュー出しとか今西さんがソロ吹いているときに次の展開を考えられると、またいくつかプラスされていって、最終的には2とかになれればいいですよね。ぼくはそうやってジャム・セッションとかでアピールして、キャリアを広げてきたんで。

――うーん、それってプロならではの厳しさって感じもしますねえ。

いや、それはプロ、アマ関係ないですよ。音楽ってそういうもんだと思います。

――横尾さんは落語の話芸について研究されていたり、ステージングについてもお考えがあると思うんですけど。

エンターテイメントっていうことを考えると、ぼくはジャズのライヴでもある程度必要だと思うんですよ。かつて、あるショーにでていたときがあるんですけど、その前年はオーディションで落とされているんです。その時に、目の前の人を楽しませる努力をしていなかったなあ、と思ったんですよ。ライヴならお客さん、オーディションなら審査する人。とにかく目の前の人を楽しませる最低限の努力はしなくちゃいけないな、と反省したんです。それがわざとらしかったらダメなんですけど、自然な振る舞いでショーとして成立させないと。MCが苦手だったら音楽で勝負して、ネガティブなことを言わず、あんまり喋らなかったらいいんですよ。

●ハード・バップ研究会と今西セクステット
――そういえば弦牧さんにインタビューしたら、「ハード・バップ研究会も横尾くんがいろいろやってくれるから大丈夫です」とか信頼されていました。

そうですか(笑)弦牧さんは譜面が苦手で、全部、キメとか曲を覚えてもらわないといけないんで。でも、何も狙わずに自分の思う通りにやってあれだけジャズのフィーリングがでるって人はいないですから。天然記念物ですよ!

――ハード・バップ研究会と今西セクステットはやっぱり違いますか?

全然、違います。今西さんの曲を演奏するか、伝統的なスタイルで演奏するか。ただ、出た音は似るとは思うんですけどね。ぼくがトップ吹いて、今西さんがボトムを固めて、ベースとドラムスも一緒ですし。

――ハード・バップ研究会結成のきっかけは?

あれは志水愛(pf)がハード・バップやりたい、よし、じゃあ、やろうって感じです。で、ぼくが総理大臣で彼女が象徴ということで(笑)

――権威と実権がある人が分かれているんですね!

ジャズ・ジャイアンツの曲をやるし、アルバムを発表するってスタイルじゃないですから。今西さんのところは、今西さんの曲をみんなで練って、アルバムつくって、それでライヴをやるってバンドですから、両者は全然、違いますね。ハード・バップ研究会はレコードで聴いていたあの曲を関西の名人たちが再演するという意味では面白いバンドだと思います。

●改めて新作について
――前作と今作の違いってありますか?

今西佑介セクステット

そうですねえ、今西さんの作曲が洗練されてきていますよね。あと、メンバーもそれぞれ上手くなってきているし。あと、今回はスタジオもよかったですしね(笑)高いだけあって。「めっちゃお金かけるやん」って横で思っていましたもん。写真もいいスタジオで腕のいいカメラマンに撮ってもらいました。

――當村さんが今作は横尾さんが活き活きしていたって仰ってました。

そうなんかなあ?回を増すごとに、CDを作る度に思うことは、弦牧さんが音楽的に巧くなっている、っていうのはね、感じますね。

――今までで一番、ジャズっぽくて臨場感があるアルバムだな、と思ったんですけど。

今西さんも心のどこかにハード・バップ研究会の影響があるかもしれないですね。昔のレジェンドたちの曲に触れているという。

――そういえば、今西さんって、かつてのティンパンアレイの作曲家みたいに、唄ものっぽい曲が多いと思うんですよね。ただ、今作はちょっとリフものっぽいってのを感じました。

そうですねえ、そうかもしれない。

――今西曲にポップスの要素がある、っていうのはいかがですか?

そうですねえ、前作の「Touch Of Spring」とかはポップス志向っぽいですよね。ただ、まあ、基本的にはジャズだと思いますよ。ほとんどドミナント進行ですし。キャッチ―というか、メロディがわかり易いっていうのが魅力だと思います。

<後日談> インタビュー中にもあった通り、目の前にいる私にもしっかり楽しませてくださるように様々なことを出し惜しみなく答えてくださり、おかげで面白いインタビューになったのではないかと自画自賛しております(笑)また、音楽制作についても具体的に話してくださったので、横尾さんというミュージシャンとその音楽の存在が良い意味でぐっと身近に感じられました。

しらきたかね

『PORTRAIT』インタビュー

セクステットの5th Album “Portrait”を作製するにあたりCDのライナーノーツを作家のしらきたかねさんに依頼しました。
しらきさんは快諾してくださり、さらにはライナーを書くにあたりバンドメンバーへインタビューを行いたい、ライナーノーツに使わなかった話はこのホームページで公開して欲しいという、僕にしてみればどう考えても有難い流れになりました。

さて、そのインタビュー記事達、どれもとても濃い内容になっております。
どうぞお楽しみ下さい。

『PORTRAIT』インタビューVol.1 當村邦明

『PORTRAIT』インタビューVol.2 光岡尚紀

『PORTRAIT』インタビューVol.3 横尾昌二郎

近日公開予定
『PORTRAIT』インタビューVol.4 柳原由佳
『PORTRAIT』インタビューVol.5 弦牧潔
『PORTRAIT』インタビューVol.6 永田有吾
『PORTRAIT』インタビューVol.7 今西佑介