『PORTRAIT』インタビューVol.8 今西佑介(後編)

「新作『PORTRAIT』収録曲の解説」

今西佑介

今回は、予告どおり今西さんに新作『PORTRAIT』の全曲解説をしてもらう。録音を振り返って、収録曲順に1曲づつ話をうかがった。こちらの解説を読んでいただいてから、改めてCDを聴いていただければ、また、違った楽しみ方ができるのではないだろうか?

「Serendipity」
ー1曲目から新加入の永田さんの曲ですが?

永田くんの作曲は歌心あって大好きなので、良かったら1曲持ってきて欲しいとお願いしたんです。この曲は1曲目にぴったりな軽快でキャッチーなスイングナンバーなのでアルバムのオープニングを飾ってもらうことにしました。聴き応えとは裏腹にコード進行が難しい、なんともニクい曲です。「幸運を引き寄せる才能」という意味らしいですね。

「My Man Steve」
まだ、アメリカ留学していた三回生の頃なので2007年に書いた曲です。Phil Woods(as)がBenny Carter(as)に書いた「My Man Benny」って曲があるんですが、そこから名前パクりましたね(笑)セクステット結成直後によく演奏していた曲で、時を経て今回のCDに収録しようと思い立ってアレンジし直しました。作曲もまだまだ慣れてなかった頃だったので、改めてバンドで演奏するにあたって少しコードや構成をいじってみました。

ー時を経て熟成されると、演奏する上でもいろいろな部分が変わりますか?

時間が経てば自分の音楽感ってやっぱり少し変わるもんですね。あの頃こだわってた部分をばっさりカットしてかなりシンプルになって聴きやすくなったんじゃないかと。
かなり短いスパンの変化で言えば、この曲の最後の弦さんのスネアの一撃、録ってすぐの時はあんまり好きじゃなかったんですが、後々じわじわきて今では案外良いなと思えるようになってます。

師匠Steve Davisと念願の共演を果たした時の今西セクステット

「Musicuriosity」
これは比喩で、曲書いてる時に一瞬浮かんできた光景でもあるんですけど。横尾くんて、都会の雑踏の中でも真っ直ぐ歩いて行ける人やと思うんです。自分をしっかり持っているというか、芯がしっかりした人というか。そこには歯を食いしばって人知れず頑張る時もあって・・・。とか考えながら書いた曲ですね。

ーピアノの独奏によるはじまりが印象的です。

柳原さんのイントロ、秀逸ですよね。これ、何も決めずレコーディング開始してすぐの一発オッケーテイクなんですよ。このイントロ大好きですわ。
僕よりこの曲のこと理解してますね。たぶん。
アウトロの横尾くんの2コードで展開されるソロもエモい。エモいって言葉を最近覚えて、と言ってもこのソロを形容する以外で使ったことはないんですけど。僕は2コードでソロとか苦手なので、ここまでアゲれる横尾くん素直にめっちゃ凄くて尊敬です。

「Take The A Train」
ーもはや恒例となっているカバー曲。アルバムごとに1曲、誰もが良く知っているスタンダードを大胆にアレンジして、全くオリジナルな演奏を聴かせてくれていますが、今回は超有名曲を横尾さんがアレンジされています。

この曲にこのリズムって発想は堅い頭じゃなかなか出来ないですよね。最後にファンキーなフィーリングに移るのもアクセントが効いてるし横尾君らしいです。全体的な聞き応えも増しますね。柳原さんの激しい一面が垣間見れるアウトロがこの曲の最大の見所ですかね。

「Smile Maker」
光岡さんが楽しげにベース弾いてるとこを想像してたらメロディーが浮かんできた曲です。書きながら、なんか曲の雰囲気がDizzy Gillespie(tp)の「Tour De Force」に似てるなぁと思ったんですが、大好きな曲だし、メロディーもコードも全然違うからまぁ大丈夫やろって思って書き上げました。「皆と一緒にいる時の明るい楽しい光岡さん」をイメージしていたら、レッスンの空き時間で一気に書けちゃいましたね。

ーインタビューで光岡さんは調性がA♭の曲が好きとおっしゃっていました。それは意識されたんでしょうか?

「Ceora」か「Valse Hot」だったかな?どっちかの曲を一緒に演奏した事があって、終わってからAbの曲が好きやけど弾くのはGが好き、って言ってはったのを覚えています。でも光岡さんの曲はAbで!って決めて書こうとはしてなくて、たまたまその時思いついたメロディがAbだっただけなんですけどね。。だからまぁ偶然ですよね。笑
わざわざAbに書き直したわけでもなく。
作曲したら基本的に初めに思いついた調から変えないようにしてるんですよ。調を変えるとイメージもガラリと変わるので。だから過去にはEメジャーの曲とかそのままやることになって自分で自分の首を絞めたこともありました。(笑)
「200 Bloomfield Ave.」って曲だけは初めCのキーだったんですが、一度やってみたらイメージしてたのとカラーが違ったんでEbにしましたけどね。
まぁ、というわけで、GではなくAbで光岡さんには弾きにくくて申し訳ないですけど、それでもさすが光岡さん、ソロの完成度は高いですよね。そんでそのソロと合わせて叩く弦さんを聴いてると、二人が笑顔で演奏してる光景が目に浮かんで笑顔になれます。さすがスマイルメーカー。

「Night Shed」
ーブルースですが、少しコンテンポラリーな響きを持っている曲だと思うのですが?

直訳で夜練、その名の通り夜中にダブル・トライアドって言うのかな?音の被らない二組の三和音で作ったヘキサトニック(六音で構成されたスケール)のパターン練習をしている時に、「あ!これブルースでいけるなー」って思いついた曲です。
この曲はテーマのメロが難しくて、ややこしい印象持たれそうなんですが、その正体は倍の尺で取った(Miles Davis(tp)の「All Blues」的な)ブルースです。當村くんと有吾のブルース衝動が溢れまくってるソロが最高ですよねー。

芦屋のLeft Aloneにて(横尾さんの髪型がNHKの某朝ドラの収録後のライブだった為ばっちりキマっている。)

「Hermit」
當村くんの雰囲気、トーン、スタイルなどをひたすら思い描いて、もうこのメロとコードしかないっていうのを少しずつ書きあげていきました。いやあ、この曲は書くのに何日もかかった難産の子だったのでその分可愛いですね。我ながらこの曲は、當村くん!って感じがします。伝わるかどうか分かんないですけど。

ーでも、確かに當村さんのソロって行きつ戻りつウネウネしたラインを演奏されているイメージがあるので、この曲の半音あがったり、戻ったりっていうコード進行はイメージにぴったりって気がします。

個人的にも、このCDの中でも一番くらいに好きなテイクです。曲としてもシンプルでキャパが広い気がするし、後々出来ればスタンダードとして残って欲しいですね。彼のトーン、タイム感、歌い方、見事ハマったと思ってて作曲者的には大成功のつもりなんですが、當村くんがこの曲のことどう思ってるか知りたいですね。それだけでももう一回インタビューして欲しい(笑)

「Journey」
過去に「A Wayfarer」(『WAYFARER』収録)という砂漠を一人で旅する人を描いた曲を書いたんですが、ある日の移動中の電車でその曲がシャッフル再生してたiPhone(移動中に音楽聴く時はもっぱらシャッフル再生)から流れてきたんです。で、自分で曲書いときながら「この旅人がまだ旅を続けてたら面白いだろうなー。もう何年も前の事だし、さすがに砂漠は抜けて全然違うとこにいるだろうなー」とか思って、「よし。また、その旅人の現在の旅の様子を書いてみよう!」って思いまして。

その「A Wayfarer」とわざとキーも同じにしましたし、前半はベースがパターンを弾くということも被せましたし、どこかメロディーも似せたろかなーとか思って書きました。ちなみに今回の旅先は綺麗な川が流れ上流には少し見上げるくらいの滝もあるような緑いっぱいの山です。
曲名つけるのに少し苦戦しまして、この曲が好きだと言ってくれたお客さんにも曲名考えるの手伝ってもらって、一緒にめちゃめちゃ考えて悩んでくれた結果、シンプルにJourneyでいいちゃう?って事で落ち着きました。ライブの度にしっくりこないバッキングやサビの最後のメロを少しづつ書き直したりしたのが思い出深いです。

ーテーマ部分の演奏もかなり凝っていますよね。テナーから、中間部はトロンボーンが吹き、最後は三管でハモったりと、物語性に富んでいます。

テーマが長い曲なので、色んなインストルメンテーションで変化つけないと飽きちゃうなーって思いまして。そういう事が出来るのも三管の良さですよね。
僕的には出来上がったCD聴いてるとHermit終わりからこの曲に行く流れがなんか好きなんですよね。レコーディング直前まで弦さんがこの曲どうやって叩くんか分からんって言ってはったんですが全然バッチリですし、光岡はベース・パターンを指定しているとこと指定していないとこがどこか聴いても分からないくらい上手いことやってくれていますし、有吾はオシャレなイントロとアウトロを弾いてくれてますし、リズムセクションの皆さんにめちゃめちゃ支えられてます。

ー永田さんはソロもどんどん展開していって、旅人感が溢れています(笑)

有吾はコードが次々変わっていっても変わらず長いフレーズをふわっと繋げれるので、上手いですよねー。
最近はベース・パターンとかドラムのパターンとか出来るだけあんまり決めつけないようにしてるんですよ。
この曲の場合、ベース・パターンは少し提示して、後は似たような感じでって伝えて特に指定していないですし。
僕が考えるより素晴らしいアイディアを持ったメンバーなので、決めてしまったらもうそのアイディアを殺してしまうなーっと思って。
あと特にライブではその時の瞬発力で良いと思った事をやって欲しいですし、譜面に書くのは最低限でなるべく指定しないようにしてます。

「Fellowship」
この曲は今回のアルバムを『PORTRAIT』にしようと思った時に、じゃあCDの最後はバンドメンバー全員の集合写真的な、バンドに宛てた曲が良いなと思って書いた曲です。初めは循環の曲(コード進行をガーシュインの「I Got Rythm」に倣ったジャズでは定番の形式)にするつもりは全然なかったんですけど、このメロディーに循環のコードよりしっくりくるコードがぱっと思いつかなくて、まだ循環書いた事なかったしまぁいいか、って感じで、これも「Smile Maker」と同様でレッスンの空き時間に20分くらいでパッと書いちゃったんですが、演奏してみたら思ってたより全然良い感じでちょっと嬉しかったです。

ー初の循環曲というのは意外でもあり、作曲家としての特徴をあらわしてそうですよね。ジャズの定型のコード進行によらずに、ここまでの曲数を書いてこられたというのは。あと、柳原さんの8分音符を敷き詰めたバッピシュなソロがかっこいいです!

柳原さんと初めてこの曲をリハした時にイントロとアウトロは小曽根真(pf)さんがOscar Peterson(pf)に書いた「Dear Oscar」のイントロみたいな感じでやってもらえたらって伝えたら、その場で柳原さんが「Dear Oscar」のイントロをぱっと弾いて、うーん、こんな感じかあ、、、って後々考えてきてくれたんですよねー。
両手であのフレーズをユニゾンってのはかなり難しそうですが、さすがっすね。

個人的に循環の曲ってなんか苦手だったんで。(笑)でもこれを機にめちゃ練習しました。全員が三者三様のソロをしますが、このバンドっぽくて良いですねー。イントロとアウトロが同じなのでバレやすいですが、テンポがちょっと速なってます。いやあ、我がバンドながらジャズしてますわ。

放出のDear Lord7周年記念企画で今西セクステットが今回の新譜をひっさげ出演

●まとめ
ー最後に感想などお願いします。

5枚目になっても、やっぱこうしてCDになると嬉しいもんですね。
今までのCDを順番に聴いてくと、今西の音楽感が少しずつ変わっていってるなーっていう様な楽しみ方が出来るかもしれないですね。ようやくあとは全国発売を残すのみになって肩の荷がだいぶ楽になりましたが、次回作も考えていかないとなーって違う荷物を背負おうとしてますね。
世界的にCDっていうコンテンツがもう終わりに近づいてる(僕のパソコンもCDプレイヤーついてないんですよねー)し、でもダウンロードやストリーミング配信だけじゃあ僕の場合は制作費の元を取るのが精一杯だろうし、次回作、どうしようかなーと悩みますね。
でも何かしら録音したものをカタチにして世に出し続けたいとは思っているので、CDに続く新しい強烈な媒体が早く出現しないかなーと思っています。
でもまぁ、そういう作品の発表は置いといて、楽曲制作とバンド活動は今まで通り精一杯やっていこうと思ってます!まずは10年、そんで20年、30年続くバンドでありたいなぁと思います。
僕、「有名なあの人と共演したい!」とか、「有名なあのバンドに入りたい!」とか、そういう夢はホント全くないんですけど、出来ればこのメンバーで日本を代表するバンドの一つになりたいなぁと思ってるんですよ。東京とか遠方から、関西以外からもこのバンド目当てで大勢のお客さんがライブに聴きに来てくれるぐらいの人気のバンドにいつかなれれば最高やなぁって。まだまだ頑張らないとダメですねー。まぁ、精一杯やってみます。

えーと、だいぶ話がズレましたが、今回のセクステット5枚目となる新譜『PORTRAIT』、CD出す度に言ってますが、バンドの「今」がそのまま真空パックされたような内容になってます。
後にも先にも今の演奏は今しか出来ないし、とにかく今の僕らの音楽感が詰まっています。

まだCD聴いてない方々、僕の音楽はこんな音楽で〜って言葉で説明するのは苦手なので、どうかまず聴いてください。
一言で言えば、ジャズです!たぶん所謂ストレート・アヘッドなスタイルです。
今回もいろんなカラーの曲が入っているのでどれか気に入ってもらえると思います。
そしてこれも毎回言ってますが、今までで一番の作品に仕上がったと思いますので、是非多くの方に聴いて頂けたらと思います。
どうぞよろしくお願いします。

ドラゴンボ◯ルのギニュ◯特戦隊のスペシャルファイティングポーズ。美し過ぎる!!完璧に決まった!!

とても長いインタビュー記事になりましたが読んで下さった皆さん、本当にどうもありがとうございました!!

しらきたかね